館蔵特殊コレクション摘報9(3)
教 林 文 庫
![]()
![]()
- 分 類 文庫7
- 収蔵数 1,111部 1,915冊
- 目録等
印刷目録:早稲田大学図書館蔵教林文庫目録稿 田嶋一夫等編(国文学研究資料館文献資料部調査研究報告 第6号 昭和60年3月刊)
その他:和漢書書名目録(カード)
- 収蔵(設置)年とその経緯
昭和32年4月
天台宗の学僧で、近江の教林坊住職であった辻井徳順師の没後、親族より文学部教授福井康順氏を通じて購入。「教林坊」所蔵の典籍であったことから「教林文庫」と名づけられた。
- 収書の特徴
滋賀県蒲生郡安土町にある観音正寺の一坊である教林坊収蔵の仏教書を中心に、その他社寺縁起類、説話集、諸記録等の主として写本・版本。この中に横川の鶏頭院、鶏足院旧蔵の写本類が相当数みられることも特色の一つである。またそれらのものは「昭和現存天台書籍綜合目録」「国書総目録」にも収録されていない埋もれたものが多く、その資料的評価は今後の研究に待つものである。
- 収書者
辻井徳順:滋賀県生。元治元年(1864)3月23日生、昭和27年(1952)12月8日没。天台宗僧侶。権大僧正(天台宗真盛派)。教林坊第10世住職。明治10年9月、13歳で滝本徳性より得度を受け加行の後、明治16年灌頂、同17年天台座主より沙弥戒、同18年円頓戒を受け、同20年豎義遂業、同36年阿闍梨開壇の伝法、同43年出家灌頂、同44年に戒灌頂を受けた。学問面では明治8年より師滝本徳性について内外典を学び、同15年中学林入学、同18 年大学林入学、同20年に卒業しているがこの間に悉曇伝授、浄土部修業、またその外声明業及唄伝を学ぶ等勉学に努めた。
天台宗真盛派別格本山西来寺住職や同派管長事務取扱等々真盛派で活躍すると同時に延暦寺本山山林経営の功により袈裟領を下賜される等山門派のためにも尽くした。しかし、明治17年願成就寺の住職になったのをはじめとして、教林坊(初住明治23年、再住大正14年)、観音正寺、東南寺等生涯の大半を近江近辺の寺に住し、教化と学問僧としての勉学に過した。そして明治時代天台学僧三徳の1人と云われた。なお、教林文庫と辻井徳順氏については田嶋一夫氏(昭和42年文研(日)卒)が詳しく研究調査されている。本稿もそれに負う処が多い。紙面をかりて厚く御礼申し上げる次第である。
参照:
教林文庫考(覚書)田嶋一夫著(国文学研究資料館文献資料部調査研究報告第6号 昭和60年刊)
「教林文庫」と辻井徳順氏 同上著(早稲田大学図書館紀要 第30号 1989年3月刊)
教林坊を訪れて 同上著(わせだ国文ニュース37号 昭和57年11月刊)
教林文庫(早大図書館現蔵)のことについて 同上著(日本文学 23巻8号 昭和49年8月刊)
教林文庫蔵「三井往生伝」同上著(説話文学研究 第8号 昭和48年6月刊)
辻井徳順履歴(文庫7一1111)
教林蔵々書目録(文庫71110)
(文責:渡部輝子)