新収資料紹介 18 ロシアの東洋学者
今回、早稲田大学図書館は19世紀ロシアの東洋学者ビチューリンの著作"Записки о Монголии"(1828),"ОписаниеЧжунгарии и Восточного Туркестана вдревнем и нынешнем состоянии"(1829),"История первых четырех ханов из дома Чингисова"(1829)の3冊を購入した。これらはビチューリンの早い時期に属する著作である。 ビチューリンについて ビチューリン(Бичурин,Никита Яковлевич)は、1777年ロシアのカザン県で生まれ、1853年にペテルブルグで死んでいる。初めは修道士であったが、むしろ東洋学者として有名になった。修道士の名はイアキンフ(Иакинф)である(因みにグラナート(Гранат))百科事典ではイアキンフで出てくる)。チュヴァシ人(Чуваш)の輔祭の家庭に生れた彼は、1799年にカザン神学大学(Казанская Духовная ака-демия)を終了、1802年にはイルクーツク神学校長に就任している。1807年に第9回ロシア伝道団の団長として北京に赴任、14年間にわたって滞在した。この間に中国語を習得、後に東洋学者として活躍するための下地をつくったと思われる。しかし、伝道団の長としては成功せず、団の事業紊乱の廉でその地位を剥奪され.1821年には北京を去っている。1823年からはヴァラムスキー修道院(Вааламский монастырь)に幽閉されるが、1826年に許され、ロシア外務省ァジア局に中国語通訳として勤務した。1828年にロシア科学アカデミーの準会員となり、以後多くの学術的著作を残した。 ビチューリンの主要な著作は中国語史料をもとにした北・中央アジアのトルコ語系諸民族の歴史・民俗についてであり、また中国の歴史・哲学・文化にも及ぶ博学なものであった。この研究や翻訳のために彼が用いた中国語史料は広範囲にわたり、東洋学の先駆的な存在として位置付けられる。 "Записки о Монголии"(モンゴル誌) <請求記号〔特〕 AE-5326> |
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