No.25(1990.10.15)p 11


統一書誌データベースの構築を目指して

葛I伊国屋書店情報制作部 和書データベース課長
藤則幸男



昨年2月より開始した入力作業は一年半を経過し、7月末までに15万件を完了した。早大本館の明治期以降に受け入れた和図書約52万冊が本事業計画の対象であり、これで3割弱の入力を終えたことになる。昨年の立ち上がり時期は月間平均3,000件であったが、準備期間を経て徐々にペースアップし、現在までで月間平均8,330件の記録となっている。J/MARC対象分(1969年以降の受入図書)の入力処理は今年6月で完了し、7月からは戦後〜1968年のJ/MARCがない時代の図書の入力を開始したが、これからの入力はオリジナル入力がほとんどであり、今までのヒット・カタロギングを主とした入力経験と目録知識が試される「第二段階」に入ってきた。

現在、紀伊國屋書店側の人員体制は入力者25名、専従者4名であり、昨年の当時業開始以来数名の退職者はいたものの、多くがこの事業に意義を認めて参加し続けてくれている。当初は目録未経験の入力者がデータシートなしでどの程度信頼のあるデータを入力できるのか早大側にご心配をおかけしたが、各人の向上心、積極的な参加意欲が成果に結びつき、分類・件名も含めて各入力者がデータシートなしで直接オンライン入力することに成功している。この背景には早大専従者の方々の丁寧なご指導とWINEシステムの機能の素晴らしさがあることを忘れてはならない。

また、我々も新人の入力者に対する教育体制の確立、入力者の数々の経験を盛り込んだ「入力マニュアル」や「事例集」の完成により全員の目録知識向上を図ってこれにお応えしてきた。また、実際の入力作業では全体を4班に分けて協力体制をとるという工夫を行ってきている。一人一人が徐々に立派な゛オンラインカタロガー"(我々の間ではオンラインによる目録作成者という意味で入力者をこう呼んでいる)になりつつあり、これらの入力者の中から今年2名が米国OCLCへ派遣されCJKの入力プロジェクトに参加するようになったことも我々に夢を与えてくれた。

さて、早大と紀伊国屋書店とはこの遡及事業の開始時よりデータベースセンター構想を計画してきており、今回遡及事業が軌道に乗ったところでセンター化へ向けて具体的な活動内容についての討議が行われた。その結果、新事業として早大と紀伊國屋書店とが協力して早大の新規受入和図書の入力を行うことが決定した。遡及データと同様、精度の高いデータが新刊本についても早い時期に公開できるよう準備を進めることになった。また、紀伊国屋書店側に設置されていたWINE端末機も従来の10台から26台体制に増設され、他の図書館の遡及入力の需要にも応えられる体制を更に強化することになった。

一方、早大の遡及事業では基本とすべきJ/MARCデータの不整合を修正し、J/MARCにない項目も追加してアクセスポイントを増やす努力をしてきている。最近まで多くの図書館ではJ/MARCが日本での標準的なMARCとしての認識がなされてきたが、これについては改善されるべき問題点が数多く残っている。我々は早大で利用される精度の高い和書データを作成することは当然であるが、早大と共同でこのデータを他の多くの図書館にも提供し、評価を受けながらこれらの問題点を一つ一つ解決して、本当の意味での標準的なデータベースを作り上げてゆきたいと考えている。

我々の統一書誌データベース構築の夢はまだまだ途についたばかりである。



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