新収資料展 2001
出陳資料目録

1. 愚見抄
 伝藤原定家撰
 室町後期写     1冊
藤原定家の撰と伝えられる歌論書で、巻末に建保4年(1216)10月13日の定家奥書を持つ。後世、おそらく室町後期頃の写本である。三重県桑名市の天台宗の古刹、仏眼院の旧蔵。


2. 続古今和歌集
 室町時代後期写    1冊
11番目の勅撰和歌集である『しょくこきんわかしゅう続古今和歌集』の古写本。室町時代中期の公卿、甘露寺親長(1424-1500)を中心に、その前後の書写・校合の過程を物語る数種の奥書を持ち、本書の書写・享受の歴史を知る上でも貴重である。


3. 頓阿法師和歌九首
 写本      1軸
南北朝時代の歌人頓阿(1289-1372)の歌9首を収める。もと袋綴本の1丁だったものを軸装に仕立てたもの。頓阿自筆との所伝があるが、室町中期頃の写本と考えられている。9首中5首が既知の家集に収められていないもので、未知の頓阿家集の存在を示唆する貴重な資料である。


4. 江雪和尚道之記
 釈宗立撰
 慶安2年(1649)2月   1巻
こうせつそうりゅう江雪宗立 (1595-1666)は江戸初期の臨済宗の僧侶。大徳寺181世住持を経て、慶安4年(1651)、江戸品川東海寺の輪番職となった。これはそれに先立つこと2年、東海寺を出立し京都へ上る旅中、各所で詠んだ和歌、漢詩をまとめたものである。


5. かんぜおんおんだゆうでんしょ観世音御太夫伝書 第四巻断簡
        2巻
江戸時代初期に編纂された『実鑑抄』の系統をひく能の伝書。全四巻のうちの第四巻の断簡であり、現状は2巻になっているが、本来は1巻であったもの。


6. じゅうにげんじそでかがみ十二源氏袖鏡
 書林堂 万治2年(1659)仲春  12冊
絵入・114図
『源氏物語』全54帖の梗概を記したもの。本書には明暦2年版と万治2年版があるが、いずれも伝本のきわめて少ない稀覯本。原表紙、原題箋を備えた美本である。


7. 俳諧刷物帖
谷文晁、酒井抱一、渡邊崋山、椿椿山等画 73枚(1帖)
折帖仕立の両面に、俳諧一枚刷73点を貼り込んでいる。文晁、抱一、崋山、椿山の画だけでも54枚を数え、これまで知られていないものも多く含む、俳諧資料としてだけでなく、美術史上からも重要な資料である。


8. 瀧澤馬琴自筆及口述稿本
『新編金瓶梅』第七集七、八之巻
第九集一、二之巻 4冊
江戸後期の読本作者、瀧澤馬琴(1767-1848)の稿本。『金瓶梅』2冊(第七集)は馬琴自筆、他の2冊は息子の嫁である路女(琴童)をして口述筆記せしめたもの。館蔵『南総里見八犬伝』稿本や日記などの馬琴コレクションをさらに充実させる資料である。近代の考証家、林若樹の旧蔵書。


9. 春雨物語
 上田秋成撰
 天保14年(1843)12月写  1冊
怪異小説『雨月物語』の作者として知られる上田秋成(1734-1809)の短編小説集で、文化5年(1808)にまとめられた作品である。天理図書館に自筆本の一部があるが、成立時の完全な形は伝わらない。本写本は全10編のうち、書写者が意識的に割愛した2編をのぞき、成立当初の排列や、個々の物語の執筆年代を伝える貴重な資料。遠藤文子氏寄贈。

<参考>岩波文庫『春雨物語』
『日本書誌学大系』33(別冊)


10. 和漢連句
酒井抱一・酒井宗雅等撰  1巻

画家として有名なさかいほういつ酒井抱一(1761-1828)は俳人としても活躍、とりゅう屠龍と号した。これは抱一を中心として編まれた和漢の連歌、連句10編余を1巻にまとめたもの。


11. 酒井抱一書状
 欠年8月19日   1巻
抱一が、10の連歌にともに参加している俳諧仲間の祇国にあてた書状。手紙に対する返事をすぐに出来なかったことを詫び、明日中の拝顔を約す。


12. 松平不昧書狩谷望之室号「・斎」
 松平治郷書     1軸
松平治郷(1751-1818)は出雲松江藩主として藩政改革を推進、致仕後は不昧と号し、茶人、文人として名を成した。同時代の考証学者、狩谷望之(・斎、1775-1835)のために、その号をしたためたもの。


13. 鑑湖台記
 服部南郭(元喬)撰並書
 宝暦5年(1755)    1巻
服部南郭(1683-1759)は江戸中期の儒者で漢詩文をよくした。鑑湖は上野の不忍池をさし、そこにあった楽山公の屋敷についての内容である。なお、本館には服部南郭家伝来の資料(服部文庫)が所蔵されている。


14. かめだほうさい亀田鵬斎書状
 自筆
 欠年6月1日   1巻
亀田鵬斎(1752-1826)は江戸時代後期の儒者。書家として有名。本書状は宛名を欠くが、鵬斎が旅先で世話になった知人にあてた礼状である。


15. 会話法
原名:Nieuwe Fransche en Neder-
duitsche Spraakwije.
 仏・マーリン(Martin, Pieter)撰
 文政5年(1822) 宇田川榕庵写 1冊
マーリン(Martin, Pieter, 1667-1718)の編纂した蘭仏・仏蘭辞書は、早くからわが国にもたらされ、オランダ通詞や蘭学者に使用されていた。本写本は、蘭学者・宇田川榕庵(1798-1846)が原書から手写したものと思われる。図書館所蔵『波留麻和解』写本(重要文化財)には榕庵の養父玄真による凡例が記されており、その中に本書を参照したことが見える。


16. 漂民御覧之記
 桂川甫周(国瑞)撰 写本
寛政4年(1791)、ロシア使節ラクスマンに伴われて帰国した漂流民、大黒屋光太夫(1751-1828)が、翌年将軍に引見されたときの様子を桂川甫周(1751-1809)がまとめたもの。大坂の文人、蔵書家である木村蒹葭堂の旧蔵書。


17. 大空武左衛門牛跨図錦絵
 歌川国安画   1枚
大空武左衛門(1803- ?)は江戸後期の、身長2mを超える巨人力士。その伝記は渡邊崋山画の武左衛門像の模写(亀屋文宝画、本館蔵)に付された瀧澤馬琴の讃に詳しい。熊本に生まれ、25歳(文政10年)で時の藩主・細川斉護に召され江戸へ出、"牛股"の号を賜った。これはその逸話にちなんで板行された錦絵。


18. 大臣影
 豪信撰 写本   1巻
原本は現在宮内庁蔵となっているもので、本来は天皇・摂関・大臣影の3巻からなる。宮内庁本と比べると、描かれている人物の順序に若干の違いがある。巻末に記された宝永6年(1709)の書写識語により陽明藤太閤家、すなわち近衛基熈(1648-1722)の蔵本の書写であることが知れる。


19. 幸田露伴書
「書を売って 書斎のすきし 寒さ哉」
 自筆      1額
遠藤文子氏寄贈
『五重塔』『露団々』などの小説で有名な幸田露伴(1867-1947)の書。露伴全集(1929年、岩波書店刊)の編纂をはじめ、露伴の作品に深くかかわった天童漆山又四郎(1873-1950)に与えたもの。


20. 天童[ぜん]硯図
 幸田露伴画     1額
遠藤文子氏寄贈
漆山天童(1873-1950)は、国文学、書誌学などさまざまな分野で業績を遺した。これは文机に向かい墨をする天童を露伴が描いたもの。


21. 高田早苗書「天怒地震」
 自筆
大正12年(1923)9月   1額
早稲田大学(東京専門学校)設立に尽力し、学長、総長を歴任、大隈重信内閣で文部大臣をつとめた高田早苗(1860-1938)の書。関東大震災に遭遇し、その驚愕と恐怖のうちにしたためたものである。震災のとき、高田は坪内逍遙(1859-1935)市島謙吉(春城、1860-1944)とともに大隈会館(当時)で食事中だったことが、春城の随筆によってわかる。


22. 明治の日本(ステレオ写真)
The Aladdin Stereographs, "Japan"   50組
明治の日本の風景、風俗を撮影したもので、外国人向けのお土産用に作成されたもの。視点をずらした2枚1組の写真を、添付の特製レンズをとおして覗くと立体の映像が見える。


23. 直木三十五葉書 細田源吉宛
毛筆9枚 ペン書4枚  13枚


24. 直木三十五書簡 細田源吉宛
毛筆巻紙
大正8年(1919)8月24日(消印)
       1通
直木三十五(1891-1934)は小説家。大阪府生まれ。本名植村宗一。明治44年早大英文科予科に入学するが学費が続かず除籍。型破りの作家だった。「直木賞」は彼の名を記念して菊池寛が設けたもの。これらは、直木が友人の細田源吉(小説家・1891-1974、早大英文科卒)にあてたもので、彼の人となりをよく表している。


25. 「民衆」第5号 北村透谷号
大正7年(1918)5月16日発行
民衆社(神奈川県小田原町・井上康文編集)
北村透谷(1868-1894)は文芸評論家、詩人。小田原生まれ。明治16年東京専門学校に入学。これは若くして自殺した透谷について特集した珍しい雑誌で、透谷研究上貴重な資料である。後ろにうつっているのは透谷の生家。


26. 飛田穂洲原稿 「熱球洗心録」
400字詰原稿用紙160枚
とびたすいしゅう飛田穂洲(1886-1965)は野球評論家。茨城県生まれ。本名ただより忠順。水戸中学(現水戸一高)を経て早大入学。同野球部五代目の主将。読売新聞で記者をした後、早大野球部監督になった。その後、朝日新聞に入り情熱的に野球評論を展開し、学生野球の父といわれた。


27. 尾崎士郎原稿「小説のこと(室生犀星氏のこと)」
200字詰原稿用紙4枚
尾崎士郎(1898-1964)は小説家。愛知県生まれ。大正5年早大高等予科政治科に入学後、社会主義運動に傾倒。「逃避行」「鶺鴒の巣」などが評価され、都新聞に連載された「人生劇場」がベストセラーとなり、一躍流行作家となった。


28. 東海林太郎色紙
「国境の町」(角屋宛為書有)
東海林太郎(1898-1972)は歌手。秋田県生まれ。早大商学部卒業後、南満州鉄道に入社。退職後クラシック音楽で身をたてようと上京、音楽コンクールで入賞しキングレコードに入社。「赤城の子守唄」「国境の町」「野崎小唄」などが大ヒットした。流行歌手として初の紫綬褒章受賞。


29. 横光利一書簡 佐藤磧宛
封書(便箋4枚) 昭和14年(1939)2月9日(消印)
横光利一(1898-1947)は小説家。福島県生まれ。早大予科在学中から創作にうち込み、菊池寛を識り川端康成らとの交渉が始まる。「日輪」「蝿」を発表し注目を浴びた。雑誌「文芸時代」を創刊。新感覚派の旗手として活躍。代表作に「機械」「寝園」「旅愁」などがある。


30. 古川緑波原稿 「カンニング」
200字詰原稿用紙12枚(1枚タイトル)
古川ろっぱ緑波(1903-1961)は俳優。東京生まれ。早大在学中より映画批評を発表。雑誌「映画時代」の記者を勤めた後、菊池寛の勧めで俳優に転向し、榎本健一と並ぶ人気者となった。レヴュー喜劇の発展に大いに貢献した。これは緑波が学生時代の追想を語ったほほえましい一文である。


31. 江戸川乱歩色紙「うつし世は夢よるの夢こそまこと」
江戸川乱歩(1894-1965)は推理小説家。三重県名張町生まれ。大正5年早大政経学部卒業後、古本屋をはじめ十数種の職業に従事。小説「二銭銅貨」が雑誌「新青年」主幹森下雨村に認められる。以後「屋根裏の散歩者」「D坂の殺人事件」「陰獣」「怪人二十面相」など多くの作品を生み出した。

<江戸川乱歩・参考出陳>
「柘榴」「妖女」「人間豹」「怪人二十面相」「蠢く觸手」「犯罪幻想」


32. 教会スラブ語四福音書 写本
16世紀後半モルドヴァ地方制作
Bible. N.T. Gospels. Church Slavic.
Manuscript on paper, written in liturgical semioncial.
Moldova, second half of the 16th century.
山田泰吉氏寄贈
201葉、320 x 305 cm、各ページ26行。四福音書の各冒頭には特色ある装飾文様が彩色されている。この写本は装飾と言語的な特徴などからモルドヴァ地方で1560〜70年代頃に制作されたとみなされている。巻頭には後代の落書きが見られる。教会スラブ語写本はわが国ではきわめて稀覯。準校友の故山田泰吉氏がルーマニアで収集したと思われる。


33. サン・ヴィクトルのユーグ
『学習論』初版
Hugh, of Saint-Victor, 1096?-1141.
Didascalicon et alia opuscula.
[Strassburg : Printer of Henricus Arimensis, not after 1474].
山田泰吉氏寄贈
サン・ヴィクトル修道院長のユーグが1128年に著した読書による学習法を学生に説いた名著。全体は2部に分かれ、第1部(第1-3章)で自由七学科、第2部(第4-6章)で聖書の解釈が述べられている。本書はヨーロッパ中世の学問・書物・読書術に大きな影響を与えた。この版は最初の印刷本であり、近年では1474年以前の印刷と考えられている。この本は巻頭6葉と巻末の白紙葉を欠き後代に修補されているが、15世紀当時のゴシック装丁を留めている。


34. ディオニュシオス・アレオパギタ著作集
Dionysius Areopagita.
Opera.
Paris : Johannes Higman and Wolfgang Hopyl, 6 Feb. 1498/99.
著者は伝説的な人物でアテナイ出身の初期教父の一人。彼は新プラトン主義思想の持ち主で、その著作はアルベルトゥス・マグヌスをはじめとする中世の哲学者たちに大きな影響を与えた。本版は彼の著作集では2番目の印刷本。フランス・ルネサンスを代表する人文主義者ルフェーヴル・デタープルにより新たに編集されたもので、ギリシア語からラテン語への翻訳はアンブロジオ・トラヴェルサリによる。この本には16世紀当時の多数の書込みが見られる。
戸山図書館購入、中央図書館移管本。


35. アリストテレス『著作集』
Aristoteles.
Politicorum libri octo : commentarij ;
Economicarum libri duo : commentarij.
Hecatonomiarum libri septem...
Paris : Ex Officina Henrici Stephani, 1506.
Bound with: Lefevre D'Etaples, Jacques.
Artificialis introductio per modum Epitomatis in decem libros Ethicorum Aristotelis. Paris : per Henricum Stephanum, 1506; Aristoteles.
Decem librorum Moralium Aristotelis, tres conuersiones. Paris : Henrici Stephani, 1510.
この本は人文主義者ルフェーヴル・デタープルがレオナルド・アレティーノらのラテン語版を用いて校訂注釈し、パリの印刷家アンリ・エティエンヌが刊行したアリストテレス『政治学・経済学』と『大道徳学』、両書の間にルフェーヴル自身の『ニコマコス倫理学序説』が挟み込まれて合本されたもの。巻頭の『政治学・経済学』はルフェーヴル校訂の初版で、アリストテレスの原典解釈上画期的な著作とされる。
16世紀前半の山羊革装丁である。
戸山図書館購入、中央図書館移管本。


36. ベアトゥス・レナヌス『ゲルマニア史3巻』初版
Rhenanus, Beatus, 1485-1547.
Beati Rhenani Selestadiensis Rerum Germanicarum libri tres.
Basileae : In officina Frobeniana, 1531.
レナヌスはパリでルフェーヴル・デタープルに師事し、バーゼルでギリシア語を学んだ古典学者。多数の古典文学の校訂を行ない、ローマとゲルマニアの歴史を研究した。本書はゲルマニア古代史を論じた彼の主著で、校正係を務めたバーゼルの印刷家ヨハン・フローベンが刊行した。レナヌスは生涯にわたって古典文献の収集に熱心で、その文庫は故郷アルザスのセレスタに現存する。


37. デューラー『測定術教本』ラテン語初版
Durer, Albrecht, 1471-1528.
Albertus Durerus Nurembergensis ...
Quatuor his suarum Institutionum geometricarum libris.
Lutetiae : apud Christianum Wechelum, 1532.
山田泰吉氏寄贈
本書はドイツの巨匠画家デューラーの幾何学的著作の一つ。1525年にニュルンベルクで刊行されたドイツ語版からのラテン語訳初版。美術家や工芸家に対して幾何学的な方法を解説した手引書で、ユークリッド幾何学の基礎から平面作図法、人体図、タイポグラフィーなどに至るまで幅広く扱い、多数の木版画が挿入されている。


38. スカリゲル『年代修訂新論』初版
Scaliger, Joseph Juste, 1540-1609.
Iosephi Scaligeri Opus novum de emendatione temporum : in octo libros tributum. Lutetiae : Apud Sebastianum Niuellium; excudebat Mamertus Patisson Typographus Regius, 1583.
著者スカリゲルはユグノーで16世紀末最大の古典学者、ライデン大学教授。多数のラテン文学作品の校訂を手がけるとともに、年代学の研究を行なった。本書は彼の年代学の主著であり、古来ヨーロッパと近東各地で行なわれてきた暦年法を集成し、比較研究して古代の年代学の確立を目指した。歴史学の基礎を築いた書物の一つである。


39. アキレス・タティオス『レウキッペーとクレイトフォンの冒険』 第2版
Achilles Tatius.
De Clitophontis et Leucippes amoribus lib.
VIII : Longi Sophistae De Daphnidis & Chloes amoribus lib. IV : Parthenii Nicaeensis De amatoriis affectibus lib. I.
[Heidelberg] : In Bibliopolio Commeliniano, 1606.
アキレス・タティオスは紀元2世紀アレクサンドリアのギリシア散文作家とみなされているが、その生涯は不明である。本書は秘められた愛を求めて数々の試練を克服していく物語である。16世紀以降各国語版が多数刊行されたが、ギリシア語校訂版はハイデルベルクのコメリヌスにより着手され、1601年にギリシア・ラテン語対訳で初版刊行された。本書はその第2版。この本は同時代にパリの愛書家の間で流行したファンファール様式で豪華に装丁されている。20世紀の愛書家として著名なJ.R.アビー旧蔵。


40. ノデ『政治学書誌』 フランス語版初版
Naude, Gabriel, 1600-1653.
La bibliographie politique : contenant les lieres & la methode necessaires a estitudier la politique.
Paris : Chez la vefue de G. Pele, 1642.
ノデは近代の図書館と書誌学の基礎を築いたフランスの司書。本書は彼の主著の一つ。ソクラテスからジャン・ボーダンに至る政治学文献の梗概で、初めて書名にBIBLIOGRAPHIAという言葉が用いられた書誌である。学術的な文献目録を意図して使用された。本書の初版は1633年ヴェネツィアからラテン語で刊行された。1642年パリ刊行のフランス語版初版であり、巻末に分類別の索引が増補され利用の便が図られている。


41. ヤコブ・ド・サン=シャルル『パリ書誌』1645年版
Jacob de Saint-Charles, Louis.
Bibliographia Parisina : hoc est, Catalogus omnium librorum, Parisiis, anno 1645 inclusiue excusorum.
Parisiis : Sumptibus Roleti Le Dvc, 1646.
ノデに続いてBIBLIOGRAPHIAを書名に使用した書誌。当時のパリ出版年鑑ともいうべきもの。著者はノデの友人で、彼の助言で本書が成立した。創刊は1643-44年版(1645年刊)であり、1645年版は第2冊目。1651年まで継続された。著者は同時にBibliographia Galliaeを1646年に発刊して1654年まで続け、フランス全国書誌の先駆けとなった。


42. グダール『今世紀の百科全書的歴史』
Goudar, Ange, 1708-1791.
Histoire enciclopedique du siecle present.
A' Amsterdam : Aux depens de l'Auteur, 1773.
グダールはモンペリエ出身の著述家で、同時代の政治・経済・農業・人口問題などを論じた。彼は英国とイタリアに永く滞在し波瀾に満ちた生涯を送った。同時代のヨーロッパ史4巻を出版するためにその梗概を記した本書を自費出版して予約を募集したが、予約が満たず刊行は実現しなかった。本書は数部が欧米の蔵書目録に記録されるのみの稀覯書。


43. ワルラス『純粋経済学要論』初版
Walras, Marie Esprit Leon, 1834-1910.
Elements d'economie politique pure, ou Theorie de la richesse sociale.
Lausanne : L. Corbaz, 1874-1877.
フランスの経済学者ワルラスは1870-92年にローザンヌ・アカデミー教授を務めた。その間に本書を著して、経済社会の諸変数を関数関係で表現しその連立方程式により経済の一般均衡を明らかにする一般均衡理論を定立した。これにより数理経済学派の創始者となった。この本は上下2巻の合本。本学には本書の第3版と第4版がすでに所蔵されている。


44. マヤコフスキイ『戦争と世界』 1917年初版
Maiakovskii, Vladimir, 1893-1930.
Voina i mir.
Petrograd : Izd. "Parus", 1917.
ゴーリキイ編集の雑誌『年代記』にロシア革命直前の1916年に断片的に発表した反戦的叙事詩「戦争と世界」をまとめたもの。ゴーリキイが詩集の出版を約束したが、結局革命直後の1917年12月に「帆」出版から刊行された。マヤコフスキイは本書の執筆と並行して叙事詩『人間』を構想していた。発行部数2000部。


45. マヤコフスキイ 『クルスクについて、コムソモール、5月、飛行、チャップリン、ドイツ、石油、第5インターナショナル、その他について』 1924年初版
Maiakovskii, Vladimir.
O: Kurske, o komsomole, o mae, o polete, o Chapline, o Germanii, o nefti, o 5 Internatsionale i o proch.
Moskva : Krasnaia nov', 1924.
1924年7月に刊行された作品集。R.マゼリの装丁がアヴァン・ギャルド芸術の雰囲気を伝えている。5000部発行。当時マヤコフスキイらは共産党員で組織された「ナ・ポストゥ」派から激しく批判されていたが、本書を出版した「赤い処女地」出版の編集長ヴォロンスキイはアヴァン・ギャルド芸術運動を擁護した。


46. マヤコフスキイ『飛行するプロレタリア』1925年初版
Maiakovskii, Vladimir.
Letaiushchii proletarii.
Moskva : Abioizdatel'stvo i Aviokhim, 1925.
マヤコフスキイは1925年5月からベルリンを経てパリ万国工芸博覧会のソ連館建造の仕事を行ない、船でメキシコに渡り、11月までアメリカを講演旅行した。その間にも数冊の詩集が刊行されたが、本書もその一つ。ソ連邦航空・化学建設協会から刊行された長編詩。飛行機をモチーフにしたユニークな装丁はグリゴリイ・ベルシャツキイによる。30000部発行。


47. マヤコフスキイ編『レフ:芸術左翼戦線の雑誌』1-7号
Lef : zhurnal levogo fronta iskusstv / otv. red. V.V. Maiakovskii. No.1-7.
Moskva : Gos. izd-vo, 1923-1925.
マヤコフスキイを編集主幹として、オシップ・ブリーク、セルゲイ・トレチャコフらを編集委員に加えた先駆的な雑誌。1923年から25年にかけて7号を発行した。印刷は国立出版所。ロトチェンコがもっぱらデザインを担当し、特に表紙のデザインで注目すべき業績を上げた。未来主義者、構成主義者、フォルマリストなどが多く寄稿し、様々な芸術文化の革命を軸にした文化全体の革命をめざした。シクロフスキイ、ポポーワ、エイゼンシュタインなどが活躍した。
刊行当時の姿を鮮やかに残している全七冊揃いを今回収蔵することができた。


48. バルザック『アルベール・サヴァリュス』挿絵原画付
Balzac, Honore de, 1799-1850.
Albert Savarus / preface de Marcel Bouteron; eaux-fortes originales de Ch. Jouas.
[Besancon] : Les Bibliophiles Comtois, 1930.
山田泰吉氏寄贈
1842年に発表されたバルザックの中篇小説『アルベール・サヴァリュス』はブザンソンを舞台にした自伝的恋愛小説。この本は1930年にブザンソンの愛書家協会が刊行した140部限定本の一冊。シャルル・ジュアスによるブザンソンを描いた挿絵が29点含まれている。ジュアス自身がR. Goulierに献呈したもので、挿絵の原画12枚が綴じ込まれている。茶色のモロッコ革で豪華に装丁されている。


49. ジークムント・フロイト書簡
大槻憲二宛
精神分析研究家、大槻憲二(早大文卒,1891-1977)に宛てたフロイトの自筆書簡。大槻憲二が翻訳上の疑問などを質したのに答えたもので、きわめて実直、筆まめなフロイトの横顔が窺える。


50. アンナ・フロイト書簡
大槻憲二宛 1939
最晩年、ナチスに追われイギリスに亡命したフロイトが、ロンドンで客死したことを伝える、フロイトの娘アンナ(児童心理学者)の手紙。


51. 桑木ケ雄宛物理学者書簡
アルバート・アインシュタイン書簡
 エルンスト・マッハ書簡
 マックス・プランク書簡
桑木土思子氏寄贈
桑木ケ雄は哲学者桑木厳翼の実弟。物理学者、科学史研究家、九州大学教授。アインシュタインをはじめ海外の学者と親交があり、わが国に相対性理論を紹介した。これらの書簡は島村抱月書簡などとともに、ご遺族から寄贈されたもの。


52. 杉浦淑子氏寄贈フランス文学作家筆跡
ポール・クローデル
(Paul Claudel, 1868-1955)
アポリネール
(Guillaume Apollinaire, 1880-1918)
ジャン・ポール・サルトル
(Jean-Paul Sartre, 1905-1980)
ポール・エリュアール
(Paul Eluard, 1895-1952)
エミール・ゾラ
(Emile Zola, 1840-1902)


53. 地契 二種
天津県 立裁売地文契人尹鳳来、尹鳳鵬・買主王有榕
光緒11年(1885)2月8日
価銀四〇両 附・民国3年(1914)1月31日同買契
光緒11年(1885)9月24日
価銀十六両 附・契尾、民国3年(1914)7月30日同買契
 原本
光緒11年(1885)の土地売買証文。乾隆14年の格式による契尾、民国初年の買契が付され、契税手続きを経て官印が捺された所謂紅契である。2通共尹氏が仲介人を立て地保(亭長)を証人として隣家の主氏に土地を売却したもので、所在地・面積・四周の長さと隣地との位置関係と、売価が記されている。
文面に依れば、代価受領次第証文を交付すると共に、此の土地が私債がある等不法な売買ではなく、後でもめごとがあった場合売主側の責任において解決することを約し、此の売契を照(証)とする旨記されている。又、9月24日付のものは、再批として、古い地契は、売主が保管し、又、売地の南の堤に小さな墓が二座あり、今後決して再葬しない旨約している。


54. 皮影戯影偶 七種
北京東城派
同治・咸豊頃 北京 驢皮製
皮影戯の起源は古く、宋代には既にその萌芽があったといわれるが、往時北京で行なわれたものは一般に「・州影戯」と呼ばれ、東城派と西城派とがあり、最盛期には三義班等20余の戯班(劇団)があった。展示資料は元北京皮影劇団長劉季霖氏のコレクションの一部で東城派の影偶と推定され、彩色を施し桐油が塗布されている。使用された演目としては、『目連救母』『滑油山』等の地獄の場合が考えられる。
1)鬼門関 2)望郷台 3)刀山地獄 4)焙烙地獄 5)油鍋地獄 二種 6)磨磨地獄

© Waseda University Library, 2000.
First drafted December 28, 2000
Last reviesed January 13, 2006