この絵巻は、源平合戦で平敦盛の死後、その遺児が法然上人に育てられ、母さらには父の霊と対面を果たすという御伽草子「子敦盛」の世界を描いたものである。 草子系の「子敦盛」は何点かが現存し、本学の絵巻は慶應義塾大学図書館蔵の絵巻と同系のものだが、他の本とは異なる独自の本文を持つ部分があることが注目される。現状は上下二巻に分かれているが、同系統の他本は一巻であるため、もとは一巻ではなかったかと推測されており、詞書16段と色鮮やかな奈良絵風の図15面から成っている。 この絵巻は飛鳥井雅親息女一位局の筆と伝えられている。室町時代後期の作品である。 〈御伽草子〉一般に室町時代を中心に作られた短編小説や物語のこと。南北朝時代から江戸初期にかけてこれらの御伽草子を内容とした絵巻がさかんに作られた。 〈奈良絵〉室町時代末期から江戸時代前期にかけて、御伽草子や謡曲の挿絵とされた、朱や緑青などの泥絵の具や、金銀箔を用いた鮮やかな色調の絵。 〈飛鳥井家〉鎌倉時代から室町時代にかけて、歌人や能書家として名をなした家系。飛鳥井雅親(1416〜1490)は室町中期歌壇の中心的な人物。 *このページは、早稲田大学学生部発行「早稲田ウィークリー」所収「早稲田の貴重書」に若干修正を加えたものです。 図書館ホームページへ Copyright (C) Waseda University Library, 2001. All Rights Reserved.
*このページは、早稲田大学学生部発行「早稲田ウィークリー」所収「早稲田の貴重書」に若干修正を加えたものです。