第1部
報道メディアに見る幕末・明治

 江戸時代に始まった瓦版は、大阪夏の陣を報じたものがその嚆矢とされている。以来、地震・火事・大風・噴火などの天変地異、敵討・孝子忠僕・心中などの市井のニュース、幕末には黒船来航、戊辰戦争が報道された。中には、荒唐無稽な珍談奇聞の類もあった。こうしたものになると、事実の報道よりも珍奇そのものを売り物にしたといえる。
 一方、芝居番付になぞらえた見立番付も見逃せないメディアであった。世相や山川草木花鳥風月をあてこんだもので、洒落や茶番を真骨頂とした。
 江戸の中期以降、日本全体としては農業社会であったものの三都(京・大阪・江戸)を中心とした都市文化の時代でもあった。こうした中で、瓦版や番付などの一枚摺は、比較的容易に作られることから、人々の情報への欲求に応える役割を果たした。そして、中に盛られた皮肉、風刺、諧謔を受けとめた民衆の豊かな受容力を窺うことができるものである。
 明治期に定期的出版物としての新聞が作られるようになり、木版から活版へと印刷手段も変って速報性が一段と増してくる。また同時に、錦絵新聞に見られる、ゴシップ種を中心としエロ、グロ、ナンセンスを売りものにするものが出現する。昨今の写真週刊誌にも通じるメディアであろう。
挿絵1 挿絵2

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