早稲田大学図書館所蔵貴重資料
請求記号:ヘ2−4867(51)
『源氏物語』は平安時代、西暦1000年前後の成立と考えられている。当時の宮廷を舞台に、主人公・光源氏とその子・夕霧、さらには薫らを中心とした人々の、愛と苦悩、栄華と挫折などを鋭く描いた作品である。今日でも、時代や国籍を越えて、多くの人に愛読されている。 ここで紹介するのは三条西家旧蔵のもので、室町時代に活躍した歌人・三条西実枝の筆になると伝えられる写本。本文は藤原定家が証本として定めた青表紙本の系統に属する。 54冊綴葉装表紙には金茶色に桜の花が織り込まれた緞子を使用、中央の題箋には金泥をひいた紙を用いるなど非常に美しい作りになっている。さらには、華麗な菊花文様の高蒔絵が施された八つ抽斗の小箪笥に収められている。いわゆる「嫁入本」の体裁である。 三条西家は代々歌道に通じ、古今伝授にも深くかかわった。また、源氏物語をはじめとした古典研究に貢献することも大であり、室町末期以降の研究者に大きな影響を与えている。
〈嫁入本〉大名や公家が娘の嫁入道具の一つとして漆塗蒔絵の箱に納めた書物。極彩色の絵入り本や、美しい書風の写本に美麗な装丁を施している。 〈古今伝授〉古今和歌集の中の語句の解釈に関する秘話などを特定の人に伝授すること。形式として確立するのは、室町時代に東常縁(とうのつねより)から飯尾宗祇に伝授してからのちである。 以後は、三条西実隆へと伝授されたことにはじまる流れ(当流・三条西家伝授)のほか、堺伝授、近衛家伝授などの支流がある。
|