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29 若山牧水書簡
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本間久雄宛 大正13年(1924)3月3日 1巻 文庫14 C57 |
[解説]
漂泊の歌人若山牧水(1885-1928)が、稲門の一年後輩で親しかった「早稲田文学」編集主任の本間久雄にあてて、寄稿を頼まれたが歌ができるかどうかわからないので、かわりに妻の作品を送りますと書いている手紙。率直でやさしい牧水の人がらがよくわかる。妻とは、歌人若山喜志子(1888-1968)のこと。
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[原文 ]
御無沙汰ばかり致しをり/ます。本日はまた御手紙/難有うございました。生/憎この七日当地発、子供/連にて郷里日向の方へ/旅行することになつてゐま/すので、何彼とごたつきをり、/或は歌をよう作れぬかも/わかりませぬ。出来るだけ/は努めてみますが、万一お/送り出来なかつた際は、何/卒あしからずお赦し下さい/まし。丁度傍にゐました/妻が、ではわたしのをお送/りしてみませうかと申し/ましたが、とにかく彼女のを/お送りさせてみます。およろ/しかつたらばそれにてお間に/合せ下さいまし。旅行先/などにて出来ましたらば、小/生よりもお送り申します。/間に合ひました号にお載せ/下さらば難有う存じます。
右、とりあへず御返事まで/若山牧水/本間久雄様
(封筒表)東京市小石川区雑司/ヶ谷町一四四/本間久雄様
(封筒裏)三月三日/沼津町/上香貫/若山牧水
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