WEB展覧会 No.43
 
   2003年10月に開催しました、展示会
「異形のものたち」に出品しました資料の
うち、これまで本WEB展覧会で公開されて
いないものを中心に集めてみました。
 






百鬼夜行絵巻 1巻
摸本 チ4 1059
 室町時代の絵巻の摸本。奇々怪々な姿をした妖怪たちが描かれているが、恐ろしさよりユーモラスな感じのものが多い。これら妖怪のかたちは、いわゆる「お化け」の原形となり、江戸時代以降に鳥山石燕『画図百鬼夜行』、河鍋暁斎による多数の妖怪画などを生むに至った。

 
画図百鬼夜行(えずひゃっきやぎょう)
3冊  鳥山石燕画 文化2年(1805) 伊勢 長野屋勘吉刊 イ4 3157(41)
 既存の百鬼夜行絵巻だけでなく、百物語系の怪異小説や様々な民俗伝承をもとに、妖怪の形態・習性をリアルに描いている。妖怪絵本の先駆けとして安永5年(1776)に初版が刊行されると、様々な読本、草双紙の挿絵に引用、応用され、現在にいたるまで、妖怪の図像の基本となっている。

 餓鬼草紙 1巻
 守純摸 嘉永元年(1848) チ4 1033
 人が前世の業によって赴く六種の冥界がりくどう六道であり、そのうち、物欲をむさぼる者が落ちるとされる餓鬼道の様子を絵にしたもの。河本家本(東京国立博物館蔵)と岡山・曹源寺本(京都国立博物館蔵)の二巻が原本として名高い。







日高川絵巻 一名道成寺縁起 1巻
チ4 2152
 浄瑠璃や歌舞伎にも脚色されて有名な僧安珍と清姫の日高川伝説を絵巻に表現したもの。清姫が蛇体となって裏切った安珍を追う凄まじさを迫力ある筆致で描いている。女の情熱・執念の激しさというテーマは古来日本人に好まれ、多くの文芸作品の主題になっている。

付喪神絵詞(つくもがみえことば) 1巻
 守純摸 嘉永元年(1848) ヘ12 1585
 家具、装身具、台所用品等々、すべての日用品は100年を経ると自ら意思を持つようになるという。妖怪“つくもがみ付喪神”の誕生である。元の形を残しながら擬人化されたその姿は、恐ろしさよりもどこか滑稽味がある。

化物草紙 1巻
守純摸 嘉永元年(1848)ヘ12 1598
 「化物草紙」は土佐光茂筆、ボストン美術館蔵の絵巻が有名であるが、早大図書館蔵本はこれとは別の内容であり、数々ある化物草紙の異本のひとつの摸本である。















大石兵六物語(おおいしひょうろくものがたり) 1巻
写本 享和元年(1801) ヘ13 1345
 1624年(寛永元)頃の鹿児島を舞台に、人を化かす狐に勇敢に立ち向かう若侍、大石兵六の物語。狐たちは兵六を脅すためにさまざまな妖怪に化けているがその姿がダイナミックに描かれている。驚いた兵六はそのたびに逃げまどい、結局坊主にされてしまう。この絵巻の伝本は館蔵本の他に数本しか知られていない。

  

 
桃山人夜話(とうさんじんやわ) 一名絵本百物語 5冊
桃山人撰 竹原春泉斎画 天保12年(1841) ハ1 2393
 わが国古来から信仰されてきた怨霊思想をもとに、もののけや鬼など超自然の存在を語る「怪談」の集大成が「百物語」である。これは諸国に伝わる怪談奇談に挿絵を付けた妖怪画集の傑作。竹原春泉斎は、これまで名前はあっても実像がなかった妖怪たちに新たな姿を与え描いていった。

破奇術頼光袴垂為搦(きじゅつをやぶってよりみつはかまだれをからめんとす) 三枚続
 一英斎芳艶画 安政5年(1858) チ5−4395
 平安中期の武将源頼光と、その郎党である渡邊綱・坂田金時ら四天王の武勇は、多くの説話文学に伝えられ、大江山の酒呑童子や羅生門の鬼退治の話として人口に膾炙している。
これは伝説の盗賊袴垂との対決を描いた幕末の錦絵で、国芳門下の芳艶が迫力ある筆致をみせている。大口あけた大蛇が恐ろしい。

桃太郎豆蒔之図(ももたろうまめまきのず) 三枚続
  一魁斎芳年画 安政6年(1859) チ5−4396
 のちに「血みどろ絵」の画家として鬼才をうたわれる月岡芳年の最初期の作品。鬼退治をする桃太郎が豆をまき、背後で恵比寿と大黒がわらっている。闇にうごめく妖怪たちの造形は、さすが後年の大成を予感させるあやしさである。

楠多門丸古狸退治之図(くすのきたもんまるこりたいじのず) 三枚続
  一魁斎芳年画 万延元年(1860) チ5−4397
 「奥州安達原一つ家の図」など、鬼気せまる絵で名高い月岡芳年は国芳の弟子で、幕末から明治前半にかけて活躍した。これは若いころの作品の一つで、童形の楠まさつら正行がタヌキの妖怪を退治している図。空中に飛翔する古狸の姿はユーモラスでもあり不気味でもある。

源頼光公館土蜘作妖怪図 三枚続
(みなもとのよりみつこうのやかたにつちぐもようかいをなすのず) 
 一勇斎国芳画 天保14年(1843) 文庫10 8285
 国芳の描いた有名な妖怪図。天保の改革を諷刺した絵といわれ、源頼光は徳川将軍家慶、四天王のうち卜部季武が老中水野忠邦を表わし、背後の闇にうごめく妖怪たちは、改革の犠牲者の怨念をあらわしている。国芳の「修羅絵」は、弟子の月岡芳年らにうけつがれてゆく。

本朝振袖之始素盞烏尊妖怪降伏之図
(にっぽんふりそでのはじめすさのおのみことようかいごうぶくのず)

  江戸川北輝画 チ5 4011
 近松門左衛門作の人形浄瑠璃「日本振袖始」は、スサノオノミコトが失われた宝剣を捜して妖怪・邪神を退治し、ついには大蛇を倒してクシイナダヒメの危難を救い、宝剣をとりもどすというストーリー。降伏している邪神がおもしろい。画家北輝は北斎の門人。





七難之図 1巻
円山応挙原画 摸本  チ4 4516
 七難とは、仏教でいう七種の災禍のことである。それをあらわした絵巻で円山応挙の原画と伝えられる。風水害による苦難のほかに、大蛇、大鷲など異形の生きものによる被害も描かれている。

画本異国一覧(えほんいこくいちらん) 5冊
春光園花丸・山東京伝撰 岡田玉山画
寛政11年(1799) 川口惣兵衛他刊 ヘ13 3425
 花丸、京伝2人の戯作者の手によって著された諸外国紹介の書。画家の岡田玉山( -1808)は、18世紀後半の大坂を代表する挿絵画家。巻頭の大清(中国)、朝鮮、台湾あたりはまだしも、巻を追うごとに内容はあやしくなり現実離れした人々、風俗が登場する。北アメリカにはろくろ首のような人々(しとうばん尸頭蛮)が、南極付近の国(めがらこく墨瓦刺国)には双頭の人々が住むという。

坤輿全図説(こんよぜんずせつ) 1冊
稲垣子■訳 橘南谿序
享和2年(1802)跋 ル2−3397
 マテオ・リッチ(利瑪竇・Matteo Ricci、1552-1610)が1602年に中国で刊行した「坤輿万国全図」の文章部分を翻訳したもの。訳者の稲垣子?は伊勢の人で、序を著した儒者橘南谿に学び、天文・地理学をよくした。図中に「西洋人ノ所写也」とあるが、これは江戸後期の西洋画家や博物学者に多大な影響を与えたヨンストン『動物図譜』を写したものである。


(C) Waseda University Library / 2003