早稲田大学図書館所蔵貴重資料
「婦系図」口絵下絵
請求記号: 文庫14-B26
「婦系図」口絵下絵
鏑木清方・鰭崎英朋画、1巻。20.1×26.9cm、19.4×26.9cm。
『婦系図』は1907(明治40)年に「やまと新聞」に連載され、翌年春陽堂から刊行された泉鏡花の長編小説で、
後年脚色されて
新派悲劇の代表作となった。
主人公・早瀬主税は、世間に内緒で芸者上りのお蔦と所帯を持っていたが、主税の師・酒井俊蔵が二人の仲を許さない。当時の婚姻制度に圧し潰されてゆく愛の姿が、鏡花得意の演劇的手法を用いて描かれており、鏡花作品の魅力を存分に味わうことができる。
実生活で鏡花は神楽坂の芸者桃太郎(本名・伊藤すず、後に結婚)と同棲するが、それを師・尾崎紅葉から反対されており、その経験をこの作品に投影したと言われている。また、この小説の連載を依頼しにきた彼の親友・登張竹風から、スリに関する興味深いエピソードを聞いたことも彼の創作の糸口となったとも伝えられている。
本間久雄文庫に所蔵されている口絵下絵は、当時、新興日本画壇のひとつ "烏合会" を結成し、世の注目を集めていた鏑木清方と鰭崎英朋の合作によるものである。まず一点は、お蔦と別れた主税を見送る柏屋の芸妓たちの図で、左端の綱次は英朋筆、中央の小芳と右側の民子は清方の筆になる。もう一点は、女学生妙子の髪を梳くお蔦が描かれており、英朋筆。出来上がった口絵にはこの下絵にはない妙子の母・小芳が書き加えられている。
新派
江戸時代に発展した歌舞伎(=旧劇)に対し、現代の恋愛悲劇などを演ずる演劇。川上音二郎・角藤定憲らの新演劇が発達し、明治中期以降、写実を目指すと共に女形芸を取り入れ、盛んになった。今も歌舞伎と新劇との中間に地歩を持つ。
* このページは、早稲田大学学生部発行「早稲田ウィークリー」所収「早稲田の貴重書」に若干修正を加えたものです。
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First drafted Febrary 18, 1998
Last revised November 25, 2005