早稲田大学図書館所蔵貴重資料
好色一代男(初版)
井原西鶴/請求記号: ヘ13-1607
好色一代男
井原西鶴著、落月庵西吟跋。1682(天和2)年10月、大坂荒砥屋孫兵衛可心版。8冊、27.3×19.3cm。
井原西鶴の小説『好色一代男』を取り上げる。
主人公(世之介)は、「色道ふたつ」に専念して生きる男夢介を父に持ち、高名な遊女を母として誕生、
7歳にして恋を知る。その後「よろづにつけてこの事(好色に関る事)をのみ忘れず」に生き、
60歳で女護島に渡るまでの彼の54年間の恋愛遍歴を小説にしたのがこの『好色一代男』だ。
西鶴が生み出した世之介は型破りな男で、世間の常識や倫理には全くとらわれていない。
"浮世" に生まれ、 "浮世" に生きた彼の人生を通して、当時の人情や風俗を興味深く描いたこの小説は、
読者の心を魅了し、
浮世草子と呼ばれる小説類の流行を生み出すきっかけとなった。
本書は、『伊勢物語』、『源氏物語』の枠組みに倣ったといわれ、章立ても『源氏』54帖にあわせて全8巻54章となっている。
本学に所蔵されているのはその初版本。西鶴41歳の時に出版されたもの。三種類の貸本屋の蔵印が押してあることから、
貸本として大勢の人に読まれたと推測される。さらにこの初版本の挿絵は西鶴の自筆ともいわれ、大変貴重な資料である。
井原西鶴
江戸前期の俳人、浮世草子作者。本名は平山藤五、井原は母方の姓といわれる。15歳で俳諧をはじめ、貞門流、談林風と移行。『好色一代男』以降、次々と述作、浮世草子の第一人者となる。代表作に『好色五代女』『武道伝来記』『日本永代蔵』など。
浮世草子
『好色一代男』以来約八十年間、上方を中心に行われた町人文学の総称、またはその時代の小説類。それまで京都中心に行われていた“仮名草子”が啓蒙・教訓的であったのに対し、現実主義的、娯楽的な内容で、好色物・武家物・町人物などさまざまなジャンルがある。
* このページは、早稲田大学学生部発行「早稲田ウィークリー」所収「早稲田の貴重書」に若干修正を加えたものです。
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First drafted Febrary 18, 1998
Last revised November 25, 2005