早稲田大学図書館所蔵貴重資料
エジプト誌
請求記号: AK4153
Description de l'E'gypte.t.
1-23. Paris, 1809-22.(エジプト誌)
この本は1798年から翌年にかけてナポレオンがフランス軍を指揮しておこなったエジプト遠征における調査結果をまとめたものだ。
遠征に当たり、彼はフランス学士院に協力を求める。その結果、エジプトの歴史、地理、博物その他に関するものを完全に記録するための学者、製図家、画家など総勢175人の調査団が随行することになった。
その調査結果を一・博物、二・現況、三・遺物の三部にまとめたものが本書のテキスト9冊、図版14冊の合計23冊。作成に約200人の芸術家が参加したとあって超大型本の図版には実に3000点以上の絵が掲載された。題材は歴史的建造物から動植物、景色、さらには住民の習俗、商工農業の様子や日用品にまで及んでいる。特に
スカラベや副葬品などの遺物はパリ博物館長ドノン(Denon,Dominique Vivant,Baron)を中心に、写実的かつ精密に描かれた銅版画であり、大変素晴らしい。
またエジプトの
ヒエログリフの解読に大きく寄与した有名な
ロゼッタ石の模写もこの中に含まれている。
この本の影響は大きく、それまで神秘のベールに包まれていた古代エジプト文明を明らかにし、近代エジプト学を誕生させるきっかけになっただけでなく、俗に「エジプト熱」といわれるブームが到来。ヨーロッパではエジプト回帰様式という新しい装飾様式が誕生するなどさまざまな分野に影響を与えた。
スカラベ
タマオシコガネをかたどった古代エジプトの工芸品。この虫を意味する語(Kheperer)が創造・再生の意味(Kheper)と類似するため、天地創造の神を表し、また球状にまるめた糞を転がす習性から太陽の神の象徴として神聖視され、印章や護符として用いられた。
ヒエログリフ
古代エジプトの象形文字。聖刻文字。神聖文字。フランスのエジプト学者であったシャンポリオン(Champollion,Jean Francois, 1790-1832)によるロゼッタ石の翻訳をきっかけに研究が進んだ。
ロゼッタ石
ナイル河口の町ロゼッタで、1799年ナポレオンのエジプト遠征軍が発見した石碑。黒色の玄武岩に2種類の古代エジプト文字、ヒエログリフ(聖刻文字)・デモティック(民衆文字)と、ギリシア文字の三書体で刻まれたもの。内容は、エジプト王プトレマイオス5世へのメンフィスの神官の頌詞(メンフィス法令・B.C.196年)の一部が記されている。現、大英博物館蔵。
* このページは、早稲田大学学生部発行「早稲田ウィークリー」所収「早稲田の貴重書」に若干修正を加えたものです。
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First drafted Febrary 18, 1998
Last revised November 25, 2005