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早稲田大学図書館ではこれまで、館蔵資料のなかから、引札、錦絵など、江戸時代から明治時代にかけて庶民の間に流布した一枚刷の刷り物を展示してきました。こうした一枚ものの資料は、概して散逸しやすく、のこっていること自体がめずらしいものですが、それゆえにその作られた時代の雰囲気を残す貴重な資料とみられるからです。
今回は「番付」と「双六」に焦点をあててみました。番付は、芝居や相撲につきものであり、今でも「長者番付」などのほか、「酒豪番付」などのいわゆる「見立番付」が多くつくられています。相撲番付にみられるように、番付とは「順番付」であり、ベストテンのようなものと考えていいでしょう。ここに展示した、江戸から明治にかけてのいくつかの見立番付には、庶民の視線からの風刺と批判精神が見てとれます。その時代の世相・風俗を映す資料として興味深いものといえます。
また双六は、インド発祥の遊戯で、古くは日本書紀にすでにその名がみえ、平安時代の物語文学のなかに盛んに出てくるものですが、近代まですたれることなく、庶民の間でおこなわれ、たのしまれてきた誰でもよく知っている遊びです。ここでは、近代の「絵双六」をいくつか展示しました。そこに描かれた絵や言葉、意匠などを通して、そこに生きていた人々の楽しみと機知が感じられるのではないでしょうか。
1999年5月