目次
- 扉
- はじめに
- 西洋の製本装丁略史
- 15-16世紀前半
- 16世紀後半南ドイツ
- 17世紀フランス
- 17世紀英国
- 17世紀ロシア
- 18世紀フランス
- 18世紀イタリア
- 18世紀英国
- 19世紀以降英国
- 19世紀英国の版元製本
- 日本における洋式製本の受容
- 幕末の洋式製本
| 早稲田大学図書館には西洋の製本・装丁の歴史的様式を当時のままに留めている書物がいくらか所蔵されています。ヨーロッパでは19世紀初めまで、書物の製本・装丁は基本的には所有者の好みによって行われていました。しかし、個人的な趣味とはいえ、それらの製本・装丁には時代的・地域的な技術や様式が反映されており、それらは当時の美術工芸の実物資料でもあります。欧米では製本・装丁は書誌学あるいは書物学の重要な一分野であり、様々な研究が行われ、大きな図書館では装丁に関する展覧会がたびたび開催されています。ところが、我が国の図書館ではこれまで西洋の製本・装丁に関心が向けられることが少なく、図書館による所蔵資料の調査もほとんど例がありませんでした。
早稲田大学図書館では1997年度に職員の自主的な研究会として大学からの研究費の助成を受けて所蔵する洋書の装丁について調査しました。調査は、貴重書に指定されている「コルヴェア・コレクション」「マンスブリッジ(ケンブリッジ大学刊行古書)コレクション」「オックスフォード大学刊行古書コレクション」「洋学文庫」などを中心に行い、各時代の装丁様式や特徴を留めている資料を記録しました。こうして、15世紀末から20世紀に至るまでの装丁の実物標本が所蔵されていることが明らかになりました。その成果の一部は、1998年9月〜10月に図書館で開催された「早稲田大学図書館蔵書に見る西洋の歴史的装丁展」で公開された次第です。早稲田大学図書館では従来このような製本・装丁の資料を特に収集してきたわけではなく、その都度内容的に必要と判断された書物を収集してきました。そのため、それぞれの時代の実物標本としては質・量ともに決して十分な資料があるわけではありませんが、我が国の製本・装丁の調査研究事情を考慮すれば、このような観点から蔵書を紹介することも決して意味の無いことではないと考えています。
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