Web展覧会 No.41
館蔵資料でたどる書物の歴史

 
I. 紙以前の書物

 書物(本、Book、Livre)とは、文字や図を何らかの材料の上に記し、思想または感情の伝達を目的としたものをいう。
 文字を記す材料として紙が発明される前は、いろいろなものが記録の媒体として用いられた。粘土板、パピルス、パーチメント、ヴェラム、木簡、竹簡、絹布、植物の葉などである。これらを用いた書物は、取扱いに便利な紙の出現とともに消えてゆくが、紙漉法の伝播が遅れたヨーロッパでは、中世のかなり遅くまで皮紙が用いられた。

 クレイ・タブレット(Clay tablet、粘土板)
 西暦前4,000年頃メソポタミアにいたシュメール人が発明したといわれている楔形文字を記した粘土板。現在確かめ得る最古の<書物>といえる。尖った筆でやわらかい粘土に文字を刻み、天日で乾かすか焼いて記録とした。

 死者の書(パピルス文書)
断片 F242-34
エジプト第18王朝前期(前1473〜1458年)頃
 エジプトでは、ナイルのほとりに生える葦の繊維を組み合わせ、たたいて平らにして「パピルス紙」を作り、書写材料として使用した。いうまでもなく英語のペーパー、フランス語のパピエなどの語源である。『死者の書』は来世を信じたエジプト人が作った死後の世界の案内書。

 死海写本(複製)
3巻(壺入) NF-1543
 1945年、ベドウィンの少年が羊を追って死海のほとりの洞窟にさまよいこみ、偶然に発見した羊皮紙とパピルスの古文書。素焼きの壺に入っており、旧約聖書のイザヤ書が古代へブル語で記されていた。原本はイェルサレムの聖書博物館に保存されている。

[ 表示へ戻る ]
[ II. 写本 印刷術発明以前の書物へ ]
[ III. 書物生産の革新 -活版印刷術の発明- へ ]
(C)早稲田大学図書館
June,2003