旧蔵者紹介

荻野三七彦 (おぎの みなひこ, 1904〜1992)

 荻野三七彦は、日本古文書学の大家として夙に有名である。
 1904年(明治37)、戦前の文化財保護行政に尽力した荻野仲三郎の次男として東京に生まれ、長じて早稲田大学に学び、後その教壇に立ち、1974年(昭和49)に同大学を定年退職するまで多くの後進の指導にあたった。また、みずから日本中世史、古文書学に関する数多くの研究成果を発表し、一方で日本古文書学会設立に尽力、学会の発展に寄与した。この間、今日の日本史学界で活躍する多くの研究者がその門下から巣立っていったことは周知の事実である。
 彼の研究・教育の基本は、常に史料の原典にあたることであった。そのため、在職中から、中世を中心とした多くの古文書の収集に力を注ぎ、現在その成果は『荻野研究室収集文書』(文庫12)として本学図書館に蔵されるにいたっている。これらの内容についてはすでに『早稲田大学所蔵荻野研究室収集文書』上・下(吉川弘文館・1978、1980年)、『早稲田大学蔵資料影印叢書』古文書集1〜3(早稲田大学出版部・1985、1986年)としてそのほとんどが翻刻・影印の形で刊行され、多くの研究者の利用に供されている。また1992年(平成4)に88歳で没した後、最後まで手元に残されていた古文書、古記録などの資料がご遺族から寄贈された。これらの資料の中には、父、仲三郎氏が収集した貴重な史料が数多く含まれている。
 本サイトで紹介している史料のほとんどが荻野三七彦が収集、所蔵していた史料である。重要文化財3件を含むコレクションは、質・量ともに、日本古文書学研究の第一級史料群であり、あらためてその偉大さに敬意と感謝の意を表するものである。